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『はなバト!』1巻無料公開! 第13回


 

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!

わたし、白沢みくに!
きれいなお花が大好きで、『花言葉』にくわしい中1だよ。

ある日の放課後、見たことのないバケモノ(!?)がおそってきて
……って、いったいうちの学校で何が起きてるの!?
助けてくれたのは、どこかミステリアスな、華道部の竜ヶ水先輩。

「みんなを守れるのは、『花』を味方にできるきみだけだ」

なんて、そんなのムリです!!!
だけど、友だちにまで危険がせまってきて!?
こうなったら、 『花言葉』がもつ力で、わたしがピンチを救ってみせる....!

 

15 消えた龍神さま

 ハッと目覚めると、まっ白な天井が見えた。
 体中が痛い。どうやら、ベッドに寝ているみたい。
 起きあがってみると、腕や足にはぐるぐると包帯が巻いてあった。
 点滴のチューブまでつながれてる。
 顔をさわってみると、ばんそうこうとガーゼだらけ。
 ここは、一体──。
「みくに!」
 ベッドを囲っていたカーテンが開き、やつれた顔のお父さんが飛びこんできた。
「おまえ、屋上で倒れているのが見つかって……五日も眠りつづけてたんだぞ!」
「……五日」
 つまり、ここは病院?
 わたし、入院していたんだ……。
「先輩は」
 無意識に、そんな言葉が口をついて出る。
「竜ヶ水先輩は? いっしょに屋上にいたはずなの。無事だった?」
 お父さんはちょっと面食らったように、首をかしげた。
「屋上にいたのは、みくにひとりだときいてるけど?」
「……わたしだけ」
 ふと横を見ると、サイドテーブルにわたしのかんざしが置いてあった。
 先っぽについた小さな鏡に、そっとふれてみる。
 わたしの胸の奥のもやもやを映したみたいに、鏡はくもったまま──。
「とにかく、意識が戻ってよかった。何があったのかは、また今度ゆっくりきかせてくれ。お母さんと先生を呼んでくる」
 そういってお父さんは、あわただしくカーテンの外に出ていった。

 いろんな検査を受けて、警察の人に話をきかれたり、学校の先生に話をきかれたり──。
 バタバタとしたけれど、退院した二日後に、わたしは学校に行った。
 桜乃星学園中等部に突如現れた竜巻は、全国的にも大ニュースになったんだって。
 そんな竜巻に巻きこまれたわたしも、ちょっとした有名人になっていたみたい。
 ──けど、わたしは学校につくなり、誰とも話さず教室から出た。
 行かなきゃいけないところがある。
 早く、確かめなきゃいけないことがある。

 北棟三階には、二年生の教室が並んでる。
 わたしは全部の教室をのぞいてみたけど、竜ヶ水先輩を見つけることはできなかった。
(先輩……)
 どんどん、イヤな予感が強くなっていく。
 だって、話しかけた二年生の先輩全員から、『竜ヶ水司って、誰?』っていわれちゃったから。
 もしかしたら、先輩の存在感が絶望的に薄くて、誰からも知られてないのかも。
 だからすぐに竜ヶ水先輩を見つけて、今日のことも笑い話にできるかも。
『先輩のこと、誰も知らないんですもん。びっくりしましたよ!』って。
(そうですよね、先輩……?)
 ざわざわする胸を押さえて、あてもなく廊下を歩きつづける──。

 その日の授業は、ずっとうわの空だった。
 学校の空気は、あいかわらずピリピリした感じ。
 屋上でキツネからとり戻せたココロは、きっとわたしのものだけだったんだ。
 ココロを食べられてしまった子がさらに増えているせいか、授業中も休み時間も、なんだかすごく静か。
 ──でも、正直……いま、キツネを追う気にはなれない。
 早く、竜ヶ水先輩を探さないと──。

 放課後になってすぐ、わたしは教室を飛びだした。
 外に出ると、ポツポツと雨が降りだしていた。
 そういえば、わたしが入院しているあいだに梅雨入りが発表されたと、お父さんがいっていた。
(……先輩……どこにいるんだろう)
 雨にかまわず、わたしは広いサク中の敷地内を歩きまわる。
 校庭。テニスコート。野球場。園芸場。部室棟。
 先輩がいない。どこにもいない。
 寮にも行ってみたけど、六〇六号室にひとつ、不自然な空き部屋があるだけ。
『竜ヶ水司』なんて生徒、最初からどこにもいなかったみたい。
 やっぱりあのとき。
 あの龍が消えてしまったとき、先輩は──。

◆◆◆

 ザーザーと、雨が本降りになってきた。
 いまさら傘をさす気になれなくて、わたしは雨にぬれながら、校門を出た。
 歩いても歩いても、先輩は見つからない。
 体が、氷のように冷たい。

 いつのまにか、目からぼろぼろと涙がこぼれていた。

 ──「──運命の、出会い……」
 入学式の日、初めて会ったときから、先輩はわたしに気づいていたんだ。

 ──「ずっと探してたんだよ、きみのこと……!」
 先輩はどんな気持ちで、何年もわたしを探していたんだろう?
 怒ってないっていってたけど、本当かな?

 ──「きみの想いは、ぼくが全部受け止める」
 わたしの『お花が好き』な気持ちを、認めてくれたのに。
 いつもわたしのことを、考えてくれていたのに。

(……わたしのせいだ)
 全部わたしのせいだ。
 柔道なんかやってなければ。
 お花なんか好きじゃなければ。
 わたしが戦うなんていわなければ。
 ちゃんと忠告をきいていれば。
 先輩はいまでも、この世界にいてくれたかもしれないのに!

 雨も涙もまざって、顔はぐちゃぐちゃにぬれている。
 疲れきったわたしは、いつのまにか、小さな池のほとりに立っていた。
(……どうやって歩いてきたんだろう?)
 少しだけ冷静になって、あたりを見わたす。
 木に囲まれた、開けた場所。
「あ……」
 その真ん中に、見つけた。
 ボロボロの、いまにもくずれそうなほこらを。
(ここって、もしかして……)
 小学生のころのわたしが、お参りした場所。
 竜ヶ水先輩──龍神さまがまつられていた、ほこら。

「先輩……ごめんなさい」
 スカートが汚れるのもかまわず、わたしはほこらの前に座りこんだ。
「わたし、全然ダメですね。先輩の代わりに、わたしが戦わなきゃいけなかったのに」
 木に囲まれた静かな空気に、さーさーと雨の音がひびく。
「先輩のいうこと、ちゃんときけばよかった。先輩がいてくれないと、わたし──」
 ふと、視界のすみに、何かが見えた。
「──あれは」
 池のほとりにたくさん生えた、細長い緑の葉っぱ。
 その中に一輪だけ、あざやかな紫色のお花が咲いていた。
 うす暗いその場所で、まるでそこだけが光っているみたいに見える。
「菖蒲の花……」
 わたしはゆっくりと立ちあがって、ふらふらと、そのお花に近づいた。
「花菖蒲の花言葉は、確か」
 冷えきったふるえる指で、花びらにそっとふれる。
「『あなたを信じる』」
 ──「ぼくはきみを信じる」
 竜ヶ水先輩の声が、頭の中でよみがえる。
 もしかしたら。
 もしかしたら、この菖蒲の花は、先輩からのメッセージなのかも……。
(……って……そんなわけないよね。何を考えてるんだろ、わたし)
 竜ヶ水先輩は、いなくなっちゃったんだ。わたしが、守りきれなかったせいで。
 ──でも、あのとき。
 龍が消えてしまったとき……確かに、声がきこえたんだ。
 先輩はきっと、わたしを信じて、巫女として頼ってくれていたんだよね。
 自分が消えてしまう最後のときまで、『わたしなら大丈夫』って、信じてくれていた──。
(わたし、こんなところでくじけていていいの?)
 このまま全部、あきらめちゃうの?
 全部わたしのせいってことで、投げだしちゃうの?
(……そんなこと……できない!)
 だって先輩が、わたしを信じてくれたから。
 神さまが信じているわたしのことを、わたしが信じないでどうするの!
「大丈夫。わたしならできる!」
 菖蒲の花が、うなずくようにゆれた気がした。
 




 ぬかるんだ地面をふみしめ、立ちあがる。
「わたしは龍神さまの巫女なんだから!」

 翌日──。
 夜のあいだに雨が上がって、梅雨とは思えないくらい、よく晴れていた。
 わたしはキッチンから『お守り』を持ちだして、家を出る。
 今度こそ。
 わたしが、ヒナちゃんの──みんなのココロをとり戻すんだ。
 竜ヶ水先輩は、そのためにがんばっていたんだから!
(ずっとずっと、逃げつづけていたけど……もう、逃げない!)
 その人が、この時間、この公園の横を通ることを、わたしはよく知っている。
「伊織!」
 背後から呼び止めると、伊織はゆっくりとふり向いた。
「……みくに」
「わたしは、伊織との思い出が大事だよ。でも……」
「………………」
 伊織は何もいわない。
 ただわたしを見つめて、くちびるをぎゅっと結んでいる。
「伊織との思い出が、大事だからこそ……絶対に、正体をあばいてみせる!」

第14回つづく>

 

【書誌情報】

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!
わたし白沢みくに。柔道がトクイだけど、中学では大好きなお花の似合う"おしとやかな子"をめざそうと思ってるんだ。でも、「学園のピンチをすくえるのは君だけだ」って、ヒミツのおやくめをはじめることに!?


はなバト! 咲かせて守る、ヒミツのおやくめ!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】814円(本体740円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322678

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▼気になる2巻は2月7日発売だよ!

部活もおやくめも大ピンチ!? 花言葉でみんなを救うストーリー、2巻め!
華道部が"廃部"の危機!? なのに、伊織もやめるって言い出して……? 七夕まつりでは、竜ヶ水先輩とのペア解散のピンチ!? 花言葉でみんなを救う【おやくめ】ストーリー、トラブルだらけの第2巻!


はなバト!(2) 想いがうずまく七夕まつり!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】836円(本体760円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322685

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