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『はなバト!』1巻無料公開! 第12回


 

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!

わたし、白沢みくに!
きれいなお花が大好きで、『花言葉』にくわしい中1だよ。

ある日の放課後、見たことのないバケモノ(!?)がおそってきて
……って、いったいうちの学校で何が起きてるの!?
助けてくれたのは、どこかミステリアスな、華道部の竜ヶ水先輩。

「みんなを守れるのは、『花』を味方にできるきみだけだ」

なんて、そんなのムリです!!!
だけど、友だちにまで危険がせまってきて!?
こうなったら、 『花言葉』がもつ力で、わたしがピンチを救ってみせる....!

 

13 ココロを取り返せ!

 それから数日。
 桜乃星学園中等部の空気は、妙にピリピリしていた。
 ──キツネがどんどん、生徒のココロを食べてしまっているから。
 ウワサのことを知らなかった人たちまで、『何かが変』って気づいてきているみたい。
 きっと外から見たら、生徒みんながまじめで、礼儀正しくて、すごくいい学校。
 でも──。

 わたしはあせっていた。
 ヒナちゃんはあれから、別人みたいに静かになって、毎日淡々と過ごしてる。
 あんなに好きだったオカルト研究部にも、全然行かなくなってしまった。
 ヒナヒナチャンネルの更新も止まってる。
 わたしのせいだ。
 わたしのせいでヒナちゃんが。
 わたしが、ヒナちゃんのココロをとり戻さないと!

 放課後は毎日、竜ヶ水先輩といっしょに、キツネを探した。
 サク中の広い敷地内を歩きまわるだけで、先輩はへとへとになっているみたいだった。
「白沢さん……そんなにあせらないで。少し休もう」
「ダメです。わたしが、ヒナちゃんを助けないといけませんから」
 先輩は止めようとするけど、耳を貸すわけにはいかない。
 晴れた空の下、運動場で探すのをやめ、校舎のほうへ戻る。
「今日は暑いし、やみくもに歩きまわっても、体力を使うだけだよ……」
「でも……わたしは全然、疲れてませんから。先輩は休んでいてください」
「きみをひとりにできない。何か作戦を立てようよ、妖狐のほうも、ぼくたちを狙っているはずだし──」
「あ」
 わたしはピタリと足を止めた。
「うわっ」
 うしろからついてきていた先輩が、わたしの背中にぶつかって声を上げている。
「いた……!」
 屋上から──わたしたちを見おろす、美しい金色のキツネ。
 その姿を見た瞬間、わたしは走りだしていた。
「ま……待ってよ、白沢さん!」
「待てません!」

 早く、キツネからヒナちゃんのココロをとり返したいだけなんだ。
『みくにゃん、おはよう!』って、いってほしい。
 変な話をして、いっしょに笑いたい。
「あんなに分かりやすいところにいるなんて、何かのワナに決まってる!」
 竜ヶ水先輩の、あせった声が追いかけてくる。
「だとしても、こんなチャンスはありません!」
 ヒナちゃんはどんなときも、わたしの味方でいてくれた。
 わたしが助けないで、誰が助けるの?
 ここで逃がしたら、絶対に後悔する!
(逃がさない!)
 昇降口から靴のまま校舎に飛びこみ、階段をかけ上がる。
 最上階まで一気にのぼり、扉を力いっぱい押しあける。
「やっと、会えた……」
 広い広い屋上──そのはじっこで、キツネは姿勢よく座っていた。
 青空の下、場ちがいなほどに気持ちいい風が、優しく吹いている。
「ヒナちゃんのココロを……みんなのココロを、返して!」
 息を整えながら、一歩ずつ近づく。
 わたしの動きに反応するように、キツネは九本のしっぽをクジャクの羽みたいに広げる。
 その背後に、徐々に火の玉が集まってきて──。
「……え……」
 そこに現れたのは、まるで太陽が落ちてきたみたいな、巨大な火球だった。
 まだ離れているのに、顔がじりじりと熱い。どっと汗がふきだす。
(……先輩の、いうとおりだった)
 これはきっと、ワナだったんだ。
 キツネはここで、ケリをつけるつもりだったんだ。
(でも……)
 わたしだって、何も考えずに追いかけていたわけじゃない。
 ポケットには、赤紫色のふさのような花──アザミが入ってる。
 とても丈夫な雑草でどこにでも生えるけど、トゲトゲで、さわると痛い。
 そんなアザミの花言葉は、『報復』──つまり、『しかえし』。
 きっと相手が大きな攻撃をしてくるほど、その力をはね返してくれるはず──。
 キツネが、大きくしっぽをふった。
 巨大な炎の玉が、ゴウッとうなりを上げて飛んでくる!
 髪から、かんざしを引きぬく。
「アザミ……花言葉は『報復』!」
 ──と、叫んでから、気づいた。
 くもった鏡に、何も映ってない!
「あっ!」
 そうだった! わたしのココロがくもっていると、鏡がくもっちゃうんだった!
(なんで? なんでわたしのココロは、いつもくもってるの?)
 ──「自分にウソをついたり、よくないと思っていることをやってしまったり……自分を見失ってしまうようなことがあると、ココロはどんどんくもっていく」
 竜ヶ水先輩の言葉が、頭によぎる。
「どうしよう……!」
 あせって鏡をこすっても、何も変わらない。
(竜ヶ水先輩に鏡をきれいにしてもらわないと、戦えない……!)
 目の前に、炎が迫る。熱すぎて、肌が痛みに引きつる。
 ──ダメだ!
 ぶつかる瞬間、必死に横へよけたけど。
「うっ……!」
 それでも勢いよく、わたしは熱風にふき飛ばされた。
 コンクリートの上をすべり、皮ふがあちこちすりむける。
 受け身が取れず、フェンスに叩きつけられるようにして、ようやく止まる。
「う……うう……」
 体中が痛い。立ちあがれない。
「ヒナちゃんのココロ……返してよ……」
 悔しくて、涙がこぼれる。
 キツネがゆっくりと、近づいてきた。
 そばで見ると、金色の毛並みが、本当にきれい──。
 もうろうとする意識の中で、わたしの体から、キツネが光のつぶを取りだすのが見えて。
 まぶたが自然と閉じていく。
 そのまま、わたしは──。
 

14 龍神の怒り

「白沢さん!」
 ききなじみのある声だった。
 意識を手放そうとしていたわたしは、うっすらと目を開けた。
 屋上の入り口から竜ヶ水先輩がかけよってきて、泣きそうな顔で、わたしの手にふれた。
「白沢さん……」
「………………」
 声が出ない。体が痛くて、力が入らない。
 もう疲れちゃった。わたし、何をしていたんだっけ?
 このまま眠りたいから、そっとしておいてほしい──。
「……無理させて、ごめんね」
 竜ヶ水先輩が、わたしの頭をそっとなでてくれた。
「あとは任せて」
 そういって立ちあがると、竜ヶ水先輩は転がっていたかんざしを拾いあげた。
 じゅうううううう、という大きな音と、大量の湯気が上がる。
 顔が、苦痛にゆがんでいる。
(せんぱい……)
 止めなきゃいけない気がした。
 でも、それがなぜなのか分からない。
 気力や感情や、いろんな思いが、ぽっかり無くなってしまった感じ──。
「ぼくの巫女を、傷つけるなんて──」
 その声があまりにも冷たくて、ぼんやりとしていたのに、急に背筋がゾクリとした。
「──絶対に許さない」
 竜ヶ水先輩が、まっ赤になった手で、ゆらりとかんざしをかまえる。
 キツネがじりっと、あとずさりする。
「龍の神の逆鱗にふれるとどうなるか、教えてあげようか」
 風が吹きはじめていた。
 どこかから飛ばされてきたたくさんの葉っぱが、屋上を舞う。
「白沢さんのココロ、返してもらう」
 晴れていたはずの空は、一転してまっ暗。
 キツネはすぐに、逃げようとしたみたいだった。
 でも、飛びあがろうとした瞬間。
 突風が吹きつけて、キツネの体はベシャリと地面にたたきつけられた。
 その口からポロリとこぼれた光のつぶが、わたしの体に、すーっとしみこんでくる。
「…………!!」
 ハッとした。
(わたし……ココロを取られちゃってた!?)
 それがいま、戻ってきたんだ。先輩のおかげで──。
 でも、竜ヶ水先輩が足を止める様子はない。
「逃げようとしたの? このぼくから?」
 まるでひどい台風のように、ゴウゴウと風がうなって、大つぶの雨が降りはじめている。
 こんなに恐ろしい風の音を、わたしは生まれて初めてきいた。
 先輩は雨に打たれながら、ゆっくりと、倒れたキツネに近づいていく。
「う……」
 意識がはっきりすると、全身の痛みまで戻ってきた。
 でも痛みなんかより、いま、もっと怖いのは。
(竜ヶ水先輩……どうしたんだろう……!?)
 あのかんざしを持ってから、先輩が先輩じゃないみたい。
 すごく怖い。イヤだ。
 わたしの知ってる竜ヶ水先輩は、神さまのくせに自信なさげで、ぽやっとしてて……そしてとっても優しくて、人の気持ちがよく分かって。いつも冷静だけど、たまに見せる笑顔がかわいくて──。
 とにかく、こんなの、竜ヶ水先輩らしくない……!
「これ以上、きみの好き勝手にはさせない」
 先輩の持つ鏡から、目もくらむような光がほとばしった。
 視界がまっ白に染まり、一瞬だけ、何も見えなくなる。
 光が弱まったとき、わたしの目の前には──。
「……そんな」
 巨大な、そして美しい龍が、ゆっくりと頭をもたげていた。
 銀色の、なめらかなウロコにおおわれた、長いからだ。
 神々しいその姿は、思わず見とれてしまうけど。
 よく見ると──右腕のほうから、ボロボロとくずれていっている。
(ダメだ、止めないと!)
 そう思ったときにはもう、周りの空気が大きく渦巻いていた。
「ううっ、何これ……竜巻!?」
 風のオニのつむじ風とは、比べものにならない大きさ。
 メキメキと、屋上のフェンスがきしんでいる。小石や砂が、巻きあげられていく。
 空気の渦はいつのまにか、天まで届くような大きさになっていた。龍の背後にいるわたしまで、気を抜くとふき飛ばされてしまいそう。
 キツネはフェンスにかじりついて、飛ばされないように必死にこらえている。
 横から叩きつけてくるような、大つぶの雨。
 校庭のほうから、たくさんの悲鳴がきこえてくる。
 そして龍の体はどんどん、ボロボロとくずれている──。
「ダメです、先輩……!」
 これは、よくない。
 分からないけど、なんだかすごく、イヤな予感がする。
 ──「何かがあって、消えるようなことになったら……」
 校長室での会話が、頭の中によみがえる。
(早く止めなきゃ。先輩にもし、何かあったら……!)
 バキッとするどい音がして、フェンスの金網が一枚、すごい勢いで空に舞いあがっていった。
 竜巻が、どんどん強くなってる。
 視界が悪すぎて、ほとんど何も見えない。
「うう……」
 痛いくらいの雨の中、力をふりしぼって、ひじで体を起こしたとき。
 まっ赤な閃光が、空気を切りさいた。
 キツネが最後の力をふりしぼるように、大きな火の玉を飛ばしてきたんだ!
 雨つぶが蒸気に変わる大きな音が、炎といっしょに近づいてくる。
(逃げられないっ!)
 ──そう思ったけど、わたしに火の玉が当たることはなかった。
 銀色の龍が、ボロボロになりながら、体を盾にしてくれたから──。
「せ……先輩!!」
 叫びながら、わたしは必死に、しっぽの先をつかもうとした。

 




 でも次の瞬間、龍の体はすべてが砂のようなつぶに変わり、わたしの手は空を切った。
「あ……」
 風がピタリと止んだ。
 びしょぬれの地面に、カラン、とかんざしが落ちる。
 空に巻きあげられていた小石たちが、バラバラと屋上のコンクリートに降りそそいでくる。
「うっ……!」
 体を丸めて、衝撃に耐える。
 最後に、ガッシャン! とひしゃげた金網が落ちてきて。
 いつのまにか雨も止み、あたりは急に、静かになった。
 視界のすみで、キツネがよろよろと逃げていく姿が見えたけど……もう、追う気力はない。
 わたしはゆっくり、目を閉じる。

 ──ねえ、白沢さん。
 ぼくは、きみなら大丈夫だって、信じてるからね。

 どこかから、そんな声がきこえた気がした。

第13回つづく>

 

【書誌情報】

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!
わたし白沢みくに。柔道がトクイだけど、中学では大好きなお花の似合う"おしとやかな子"をめざそうと思ってるんだ。でも、「学園のピンチをすくえるのは君だけだ」って、ヒミツのおやくめをはじめることに!?


はなバト! 咲かせて守る、ヒミツのおやくめ!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】814円(本体740円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322678

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▼気になる2巻は2月7日発売だよ!

部活もおやくめも大ピンチ!? 花言葉でみんなを救うストーリー、2巻め!
華道部が"廃部"の危機!? なのに、伊織もやめるって言い出して……? 七夕まつりでは、竜ヶ水先輩とのペア解散のピンチ!? 花言葉でみんなを救う【おやくめ】ストーリー、トラブルだらけの第2巻!


はなバト!(2) 想いがうずまく七夕まつり!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】836円(本体760円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322685

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