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『はなバト!』1巻無料公開! 第11回


 

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!

わたし、白沢みくに!
きれいなお花が大好きで、『花言葉』にくわしい中1だよ。

ある日の放課後、見たことのないバケモノ(!?)がおそってきて
……って、いったいうちの学校で何が起きてるの!?
助けてくれたのは、どこかミステリアスな、華道部の竜ヶ水先輩。

「みんなを守れるのは、『花』を味方にできるきみだけだ」

なんて、そんなのムリです!!!
だけど、友だちにまで危険がせまってきて!?
こうなったら、 『花言葉』がもつ力で、わたしがピンチを救ってみせる....!

 

12 ヒナヒナチャンネル

 次の日学校に行くと、教室の雰囲気が変だった。
 いつもまっ先に挨拶してくれるヒナちゃんが、じっと自分の席に座ってる。
 そしてその様子を、他の人たちが遠巻きにながめてる。
 ──なんかすごく、重い空気。
「ヒナちゃん?」
 うしろから、そっと声をかけてみると。
「みくにゃん……」
 いまにも泣き出しそうな顔でふり向かれて、わたしはドキッとした。
「ヒナちゃん、どうしたの? 大丈夫?」
「うちの……ヒナヒナチャンネルが、大変なことになっとんねん。どうしよう、どうしたらええんやろ」
 取り乱した様子のヒナちゃんに、胸の奥がざわざわする。
「落ち着いて、ヒナちゃん……何があったの?」
「うち……昨日、学校で配信しててん」
「うん、見たよ。妖狐を探す配信……だっけ?」
 昨日、華道部にいたとき、ちょっとだけ見た配信のことだ。
「うん、それで……全然、キツネが出てこーへんから。トイレに隠れて、下校時刻を過ぎたあとも、夜の学校で配信してたんよ」
「ええ!?」
 なんでそこまで、といいかけてハッとする。
 ──昨日わたしが、『がんばって』なんていっちゃったからかも……。
「けっきょく警備員につかまって、先生たちにものすごーく怒られて、反省文書くことになって……配信自体は八時前には終わったんやけど」
「うん……」
「昨日の配信のアーカイブ……チャンネルに自動で投稿されるの、忘れとって。朝起きたらコメントがたくさんついとったから、ドキドキしながら見てみたら……こんなことに」
 そういってヒナちゃんは、スマートフォンの画面を見せてくれた。
【夜の学校に侵入するなんて最悪】【こんなことしていいと思ってるの?】【人に迷惑かけんな】【教育失敗】【引退しろ】【つまんない】【やめろ】【謝れ】【中学生にもなって何してんの?】……。
 ずらりと並んだコメントたちに、ぞわりと鳥肌が立つ。
「な、何これ」
 怖い。
 オニよりもずっと怖い、と思った。
 部外者のわたしが見ても怖いんだから、この言葉を直接向けられているヒナちゃんは、きっともっと怖いはず……。
「こうやってインターネットで批判が集まることを、『炎上』っていうねん」
 ぼう然と画面を見ていたら、ヒナちゃんが教えてくれた。
「炎上……」
「うち、ヒナヒナチャンネルを、いつか有名にしたいと思っとった。でも、こんな炎上で有名になっちゃうなんて、思わへんかった」
 肩を落として、ヒナちゃんはスマホの画面を閉じた。
「……確かに我ながら、やりすぎやったとは思うけど。けど……先生たちは、謝ったら許してくれたのに。この人たちは、全然許してくれへん。どうしたら許してもらえるんやろ。うち、ヒナヒナチャンネル、消さなあかんのやろか。うちなりに、がんばっとったのに」
 そうだ。ヒナちゃんはがんばってた。
 全然、見てくれる人がいなくても──。
(……あれ?)
 何か、変だ。
 ヒナヒナチャンネルの登録者数は、わたしを入れて三人だったはず。
 昨日の配信も、わたし以外、ほとんど見ている人はいなかった。
 なのになんで急に、こんなに人が集まってきたの……?
「ざまあみろ!」
 突然、教室にガタイのいい男子生徒が入ってきた。
 こっちを指さしてるから、たぶん、わたしたちに話しかけてると思うけど──。
「…………誰?」
 わたしとヒナちゃんが首をかしげると、その人は顔をまっ赤にして、足をふみ鳴らした。
「覚えとけっていっただろ! 記憶力までゴリラかよ!」
「……あああっ!」
 その言葉で、思い出した!
「わたしに、軽々と背負い投げされた人だ! たくさんの人の前で!」
「イヤな思い出しかたをするんじゃねえ! あいかわらず失礼なやつだな!」
 伊織にからんでた、男子柔道部の先輩!
 そういえば捨てゼリフで、『覚えてろよ』っていってた気もする!
「まさか」
 ハッとして、声がふるえる。
「まさか……これが、わたしへの仕返し……?」
「おまえ、クラスで浮いてるってきいたからな。これでそいつから嫌われたら、もうおまえに味方なんていなくなるだろ!」
「う……」
 確かに、そう。
 ファンクラブからの嫌がらせは終わったはずだけど……わたしは、クラスのみんなとあんまり仲良くできてない。特に、いっしょに部活見学に行った子たちとは、なんだか気まずい感じ。
 この先輩をなげ飛ばす場面を、見られちゃったせいかな?
 全然話さないわけじゃないけど、なんだか少し距離を感じるんだ。
「ひ……ひどいよ。そんなことのために、ヒナちゃんのチャンネルを炎上させたなんて……」
「そもそも、オレは拡散しただけだ」
 柔道部の先輩が、勝ちほこったように鼻で笑う。
「かくさん……って何?」
「インターネットで、たくさんの人に見てもらえるように広めることだ──って、なんでオレが説明しなきゃならねーんだよ! ふざけんな!」
「ふざけてるのはあなたのほうだよ! ヒナちゃんのチャンネルを、わざと広めたってことでしょ!」
 思わずギュッとこぶしをにぎりしめると、先輩は顔を青くしてあとずさった。
 このあいだわたしに投げとばされた感覚を、思い出したのかもしれない。
「な、なんだ、やんのか?」
「…………やりませんよ」
「おまえ、華道部に仮入部してるらしいな? 生け花とか似合わないことしてんじゃねーよ!」
「……そ、そんなこと……」
 いい返そうとして、のどに声がつまる。
 周りのクラスメイトたちからの、視線が痛い。
 ──こんな騒ぎを起こしちゃうなんて、やっぱりわたし、全然変われてない。
 この人のいうとおり、お花なんて似合わない──。

 うつむいていたとき、誰かがわたしと先輩のあいだに割って入った。
「うちの大事な友だちに、何をいうてくれとんの?」
「ヒナちゃん……」
 さっきまで、あんなにしょんぼりしてたのに。炎上は、わたしのせいだったのに。
 まさか、こんなときにもかばってくれるなんて……。
「なっ、なんだおまえ!」
「ようするに、みくにゃんに勝てへんからってこんなことしたんやろ。かわいそうな人やね、ほんまに」
「う、う、うるせー! 変人ばっか集まりやがって! くそ!」
 顔をまっ赤にして、柔道部の先輩は足音荒く立ち去っていった。
「変人はほめ言葉やわ」
 ふっ、とカッコよく笑って、ヒナちゃんはこちらにふり向いた。
「みくにゃん、あんな人のいうこと、気にせんでええで」
「ヒナちゃん……ごめん。ごめんね。わたしのせいで、ヒナちゃんのチャンネルがあんなことになっちゃったんだ」
「だから、気にせんでええって。みくにゃんのせいやないし、うちはこんなことで、みくにゃんのこと嫌いになったりせーへんから」
「でも……」
 わたしのせいで、ヒナちゃんは余計に配信をがんばろうとしたはずだ。
 それに、わたしがちゃんと『キツネはあぶないよ』って注意してたら、こんなことにならなかったかも。
 わたしがあの先輩を投げとばさなければ。
 そもそも、わたしが柔道なんてやってなければ──。
「……まあでも、コメントでいわれたことは、きっと正しいんやろな」
 暗くなったスマートフォンの画面を見おろして、ヒナちゃんはさびしそうに笑った。
「中学生にもなって、何してるんやろね、うち」
 ヒナちゃんがこんな顔をするところ、初めて見た。
 なんて声をかければ、元気になってもらえるんだろう……。

◆◆◆

 その日の放課後。
 わたしと竜ヶ水先輩は再び、校長室にいた。
 ──実は昨日、めちゃくちゃになった校長室に先生が戻ってきて、大さわぎになったんだよね。
 何かいたずらしたんじゃないかってすごく疑われたけど、『風のせいです!』って必死にいいわけして。
 一応、弁償とかはしなくてすむことになったけど、ちゃんと掃除をするようにいわれちゃったんだ。
 元気のないヒナちゃんが心配だけど、こればかりはサボるわけにもいかない。
(ヒナちゃん……大丈夫かな。何かわたしにできること、あればいいのに)
 ぼんやりしながら窓をぞうきんでふいていると、竜ヶ水先輩が、遠慮がちにせきばらいをした。
「……それにしても、昨日の風のオニはあぶなかったね」
 先輩から話題をふってくるなんて、ちょっと意外な感じ。
「あ、えっと……そうですね──」
 だまっていたから、気をつかわせちゃったのかも。
 いつもどおりにしてないと、心配かけちゃうかな?
「──ほんと、ふたりとも、小さなケガですんでよかったです!」
 あえて明るく答えながら、広い部屋を見わたす。
 床や壁にたくさん残っている無残なあとを見ると、改めて怖いオニだったんだな、って思う。
 もしもっと、大きな傷を受けていたら──。
「……先輩って、神さまなのに、死んじゃうこととかあるんですか?」
 ふと気になってたずねると。
 ホウキがけをしていた竜ヶ水先輩は、その手を止めて、ちょっと考えるそぶりをした。
「うーん……人じゃないモノは『死ぬ』というより『消える』という表現のほうが正しいかも」
「消えちゃう、んですか」
 そういえば先輩は、もともと消えかかっていた神さまなんだっけ。
「何かがあって、消えるようなことになったら……たぶんぼくの存在は、人間たちの記憶からも消えてしまうだろうね……」
「みんな先輩のこと、忘れちゃうってことですか?」
 先輩がいなくなったことすら、みんな気づかないってことだよね。
 そんなの、すごく悲しい。
「もしかして……そうなったらわたしも、先輩のこと忘れちゃうんですか?」
「白沢さんはどうだろう……ぼくの巫女だし、少しはつながりが残るかもね」
 そういってから、竜ヶ水先輩は何か思い出したようにパチンと手を打った。
「ああ……あと、いま使っているこの体が死ぬようなことになったら、ぼくも消えるから」
「えっ」
「まあそうなったら、きみの中にあるぼくの神通力も消えるはずだよ」
『自分が消えちゃう』っていう話なのに、先輩の声はすごく淡々としてる。
 なんでもないことみたいに、いわないでほしいよ!
(先輩が、あぶない目にあわないようにしないと……!)
「もしまたオニが来たら、わたしが追い払います! だから、いなくならないでくださいね!」
「ありがとう。頼りにしてるけど……くれぐれも、無理はしないでね」
 先輩はそういってほほ笑むと、再びホウキを動かしはじめた。
(神さまだからって、何があっても平気なわけじゃないんだ。気をつけよう!)
 ギュッとぞうきんをにぎりしめて、わたしも掃除を再開した。

 ──校長室の掃除を終えてから、わたしと竜ヶ水先輩は北棟一階の廊下を歩いていた。
(そういえばヒナちゃん、部活は行ったのかな……)
 そんなことを、ぼんやりと考えていたとき。
「きゃ~~~~~~っ!!」
 突然きこえてきた悲鳴に、わたしたちは足を止めた。
 きき覚えのある声に、なんだか胸がザワザワする。
「白沢さん……! 見て!」
 先輩の視線の先は、窓の外。
 北棟と南棟のあいだにある、広い中庭。
 放課後は日陰になってうす暗いから、いつも人は見かけないんだけど──。
「あっ、あれは……キツネ!?」
 九本のしっぽをゆらりと持ちあげ、金色のキツネが座っていた。
 その足元に――ヒナちゃんが倒れてる!
 ヒナちゃんのおでこに、キツネは鼻先を近づけた。
 ホタルみたいなふわりとした光が出てきて、キツネはそれを、パクリと食べた。
「ココロを食べてる」
「……と、とり返さないと! ヒナちゃんが!」
 考えるより先に、体が動いていた。
 窓枠をひょいっととびこえ、中庭のレンガ敷きの地面に着地する。
 金色のキツネはハッとしたように顔をあげると、飛ぶように走りだした。
 追わなきゃと思いながら、まずはヒナちゃんにかけよる。
「ヒナちゃん! ヒナちゃん、しっかりして!」
「ううーん……?」
 長いまつげが、かすかに動く。とりあえず、ケガとかはなさそうでホッとする。
「よかった、ヒナちゃん──」
「……どうしたんですか、白沢さん」
 




 うつろな目に見つめられて、わたしはドキリとした。
「え」
 ヒナちゃんはいつもわたしを、『みくにゃん!』って呼んでくれるのに。
 こんな冷たい声、出さないのに。
 これが、ココロを食べられちゃうってことなの……?
「白沢さん、動きが速すぎるよ……!」
 竜ヶ水先輩が、ようやく追いついてきた。
 ぼう然としていたわたしは、ハッと現実に引き戻された。
「せ……先輩。とりあえず……ヒナちゃんをお願いします。わたしはキツネを追います!」
「え? ちょ、ちょっと……!」
 とまどう竜ヶ水先輩を置きざりに、わたしはキツネが逃げたほうに走った。
 南校舎の中に飛びこんでいく、キツネの姿がちらりと見える。
「逃がすもんか……!」
 わたしもすぐに、そのあとを追う。
 ──ヒナちゃんのココロが食べられちゃったのは、きっとわたしのせいだ。
 わたしのせいで、ヒナヒナチャンネルが炎上して。
 ヒナちゃんのココロを、くもらせてしまったから──。
 窓から南棟の校舎に飛びこみ、キツネがどっちに向かったか確認する。
 ハッと左を見ると、曲がり角の向こうに、しっぽが消えていくのが見えた。
 見失ったら大変!
 全力で走って、廊下を曲がって!
「わっ!?」
 勢いよく、何かにぶつかった。
「うわあ!?」
 どしん、としりもちをついた、その人は──。
「あ……ほむら先輩」
 そういえば……生徒会室って、確か南棟にあるんだっけ。
「いたた……ど、どうしたの、みくにちゃん」
 頭を押さえながらよろよろと立ちあがって、ほむら先輩は困った顔をした。
「廊下は、走っちゃダメだよ」
「ごめんなさい! いま、キツネを追いかけていて……」
「キツネ? なんでこんなところで、キツネ?」
 髪を耳にかけながら、ほむら先輩は首をかしげる。
「あ……えっと、それは……」
「伊織くんならすれ違ったけど、さすがに、キツネは見てないなあ」
「伊織?」
 ハッと顔をあげ、再び廊下を全力で走りだす。
「みくにちゃん! 廊下は走っちゃダメ!」
 うしろから先輩の声がするけど、足は止めない。
 曲がり角で、スピードをゆるめず曲がる。
 見えた。あの背中は。
「……伊織!」
 大声で呼ぶと、伊織はぴたりと足を止めて、こっちにふり向いた。
「みくに……どうしたんだよ、そんな顔して」
「伊織は……どうして、ここにいるの」
「ど……どうして、って」
 目を泳がせる伊織に、心臓のドキドキが大きくなっていく。
 ──「昨日、妖狐と影のオニに、続けて襲われて……そのあとすぐ、西方くんに会ったよね」
 竜ヶ水先輩の言葉が、頭によぎる。
(……同じだ)
 キツネの姿は、きれいさっぱり消えちゃった。そしてまた、伊織に会った。
 ──「西方くんが、怪しいかも」
 竜ヶ水先輩の言葉どおり……もし、本当に、伊織が人間じゃなかったら?
 もし、伊織がいつのまにか、ニセモノになっていたら?
 いつから変わっていたの? なんでふつうに話しかけてくるの? 本物の伊織はどこ?
 胸の奥に、じわじわとイヤな感じが広がっていく。
「おい……そんなことより、おまえこそ最近、かくしごとしてないか?」
 伊織が眉をひそめて、ゆっくりと近づいてくる。
「……だ、だとしたら何」
「竜ヶ水先輩とよくいっしょにいるし。ふたりで何してるんだよ、一体」
 なんで伊織は、こんなに竜ヶ水先輩のことを気にするの?
 やっぱり、先輩の正体を知っているの……?
「……いまは……話したくない」
 考えたくない。考えれば考えるほど、よくない結論にたどりつく。
(ヒナちゃんの様子……見にいかなきゃ)
 わたしは、考えるのをやめた。
 そして伊織の顔を見ないようにして、逃げるようにその場をあとにした。
 



第12回つづく>

 

【書誌情報】

絶対ナイショのパートナーと、 【花言葉】をとなえてみんなを救え!
わたし白沢みくに。柔道がトクイだけど、中学では大好きなお花の似合う"おしとやかな子"をめざそうと思ってるんだ。でも、「学園のピンチをすくえるのは君だけだ」って、ヒミツのおやくめをはじめることに!?


はなバト! 咲かせて守る、ヒミツのおやくめ!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】814円(本体740円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322678

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部活もおやくめも大ピンチ!? 花言葉でみんなを救うストーリー、2巻め!
華道部が"廃部"の危機!? なのに、伊織もやめるって言い出して……? 七夕まつりでは、竜ヶ水先輩とのペア解散のピンチ!? 花言葉でみんなを救う【おやくめ】ストーリー、トラブルだらけの第2巻!


はなバト!(2) 想いがうずまく七夕まつり!?

  • 作:しおやま よる  絵:しちみ
  • 【定価】836円(本体760円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322685

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