3月5日(木)発売予定の『怪盗レッド THE FIRST』を発売前に公開!
これまでのお話はコチラから。
▶プロローグ&第1話
▶第2話 教室で僕は擬態する
▶第3話 はた迷惑な来訪者
▶第4話 放っておけない同級生
▶第5話 圭一郎の〝推測〟
▶第6話 80%のヒーロー
▶第7話 勇気と無謀のあいだ
▶第8話 似たもの兄妹
9 確率は20%
一通り事情を説明し終えるのに、30分ほどかかった。
黄瀬さんのことから始まり、貴金属店の強盗事件、逃走ルートや黄瀬さんの指輪の行方についての、僕の推測も。
すべて話し終えてから、僕がキッチンから持ってきた麦茶で、喉をうるおしていると、紅月先輩が口を開く。
「なるほどな」
紅月先輩は1つうなずき、続けて言う。
「ようするに、宝石強盗犯を、一網打尽にすればいいってことだな」
……本当にこの先輩は、僕の話のなにをきいていたんだろうか。
いや、きいていたのは強盗犯という言葉から、わかるけど。
〝万引き犯をつかまえる〟とか、そういうレベルの話じゃない。
強盗は重犯罪だ。
そして緻密に計画された犯行。犯罪者の集団だ。
それを、ただの中学生がどうこうするっていうのが、どれだけ無茶な話か。危険なことか。
自分で何度もシミュレートしたから、よくわかっている。
成功する確率は、10%ぐらいだ。
紅月先輩が加わったとして、10%プラスされて、20%といったところ。
そのこともふくめて、きっちり説明したつもりだったんだけど。
「そう簡単にはいかないですよ。相手は複数の大人だし、武器を持ってる可能性だって高い。そもそも、黄瀬さんの指輪を持っているのが強盗犯かどうかの確証もない」
僕は、念を押すために、はっきりと言う。
「でも、圭一郎は確信してるんだろ?」
紅月先輩は、話のポイントはそこだけだ、と言わんばかりの顔をしてきいてくる。
「それは……そうです」
僕はうなずく。
確信してなかったら、こんなことに他人を巻きこもうなんて、思わない。
「なら問題ない。荒事なら、心配いらないぜ。おれたちにまかせとけ」
「おまかせだよ!」
紅月先輩も、美華子ちゃんも、怖じ気づくどころか、乗り気になっている。
……というか、どうして美華子ちゃんまで、参加するかのように話しているんだろう。まるで遠足の計画みたいに。