3月5日(木)発売予定の『怪盗レッド THE FIRST』を発売前に公開!
これまでのお話はコチラから。
▶プロローグ&第1話
▶第2話 教室で僕は擬態する
▶第3話 はた迷惑な来訪者
▶第4話 放っておけない同級生
▶第5話 圭一郎の〝推測〟
▶第6話 80%のヒーロー
7 勇気と無謀のあいだ
5分ほど小走りで走って、人通りのある大きな通りに出る。
ここまでくれば、不良も追ってこないはずだ。
「助かりました。ありがとうございます、先輩」
僕は頭を下げて、紅月先輩にお礼を言う。
「いや。たいしたことはしてないが」
紅月先輩は気まずそうに、ぎこちなく答える。
「……でも、どうしてあの場にいたんですか?」
「ぎくっ!」
紅月先輩は、わかりやすいぐらい、反応をしめす。
やっぱりか……。
「…………僕を、つけてましたね?」
難しい推理じゃない。ここにくるまでの間、紅月先輩がどうして現れたのか考えたら、それ以外の可能性が低かっただけの話だ。
「い、いや、たまたまあそこに居合わせただけだ。偶然ってやつだ!」
紅月先輩は、あせったように言う。
そんな理由で、押し切るつもりらしい。
でも、助けられたのは事実だし、今は紅月先輩のことを問い詰めてる場合でもない。
「まあいいです。助かったのは事実ですし、感謝しています。それじゃ」
僕は、紅月先輩に背中をむけて、歩き出そうとする。
「ちょっと待った!」
そんな僕を、紅月先輩が止める。
「なんですか?」
僕は足を止めて、ふり返る。
「……困っていることがあるなら、手を貸す。人手がいるんじゃないのか?さっきのとおり、おれはそれなりに動けるつもりだが」
紅月先輩が、さっきまでのうろたえた様子とは打って変わって、真剣な顔つきで見つめてくる。
うっ……。
僕の前では、いつも笑顔でいることが多いから、その迫力に、思わず僕は言葉が詰まる。
だけど、たしかに紅月先輩の言うとおりだ。
不良3人を倒した、紅月先輩の動き。あれは、ただ者じゃなかった。
もし黄瀬さんの指輪を取りもどすなら、紅月先輩が手伝ってくれれば、採れる手段が、だいぶ増やせる。
でも、事がことだ。そう簡単に巻きこむわけには……。
「勇気と無謀を、はきちがえるなよ、圭一郎」
僕が断ろうと口を開く前に、紅月先輩が言う。
「え?」
「おまえに足りない部分は、力を貸すって言ってるんだ。ありがたく受けておくのが後輩ってやつだろ?」
紅月先輩は、いつの間にか僕の横にきていて、よく鍛えられた腕を僕の首にかける。