ニュース

  1. ホーム
  2. ニュース
  3. 【最新作をさき読み!】『怪盗レッド THE FIRST』第5話「圭一郎の〝推測〟」

【最新作をさき読み!】『怪盗レッド THE FIRST』第5話「圭一郎の〝推測〟」

3月5日(木)発売予定の『怪盗レッド THE FIRST』を発売前に公開!
これまでのお話はコチラから。
▶プロローグ&第1話
▶第2話 教室で僕は擬態する
▶第3話 はた迷惑な来訪者
▶第4話 放っておけない同級生

 

5 (けい)(いち)(ろう)の〝推測〟

(ふじ)(しろ)くん、これどうぞ」

 黄瀬(きなせ)さんが、ペットボトルに入っているお茶を、わたしてくれる。

「ありがとう。いくらだった?」

 僕はきく。

 僕と黄瀬さんは、公園のベンチにすわっていた。

 あれから1時間ほど(さが)したけど、見つからなかったから、(きゅう)(けい)することにしたんだ。

 黄瀬さんは、近くの()(どう)(はん)(ばい)()で、飲み物を買いに行ってくれていたところ。

「ううん、いいよ。捜すのを手伝ってくれたお礼だから」

 黄瀬さんは、首を横にふる。

「いや、そういうわけには…………わかった。ありがたく受けとっておくよ。ありがとう黄瀬さん」

 僕は断ろうとしたけど、黄瀬さんの表情を見てあきらめた。

 あの表情は、絶対に僕からお金を受けとる気はないという顔だ。

 ここで、そんなことで、もめていてもしょうがない。

 ()(なお)に、おごられることにする。

「それで、これからどうする?」

 僕は、お茶のペットボトルで(のど)をうるおしてから、黄瀬さんにきく。

「今日は捜すのはあきらめるよ。そろそろ暗くなって、地面も見えにくくなってくるだろうし」

 黄瀬さんが言わなかったら、僕から提案していたところだ。

 まだ()はあるけれど、それでもあと30分もすれば、効率はかなり下がる。

「そのほうがいいと思う。また声をかけてよ。捜すのを手伝うから」

 ……それに僕のある推測が、もし当たっていたなら、黄瀬さんを、暗い中、このあたりでうろうろさせたくない。

「ありがとう、藤白くん。……なんだか、教室とイメージがちがって、おどろいちゃったよ」

 黄瀬さんは、いたずらっぽい()みをうかべて、僕のことを見る。

「イメージ?」

「あ、ごめん! 気を悪くしないでね。藤白くんって、もっと冷めた人なのかなって思ってたから」

 黄瀬さんは、あわてたように言う。

「まちがってないよ。冷めてると自分でも思うし」

 僕は、自分が情が深いとか、(やさ)しい人間だとは思ってない。

 合理的な考え方をするたちだし、小学校のときには、それを元に行動して「冷たい」と言われたこともある。

 だから、()(くつ)で考えている様子を、なるべく人に見せないように気をつけてるんだけど。

 どうも、黄瀬さんには、最初に(かく)せなかったせいか、()が出てしまうところがあるかも。

「冷めてる人は、クラスメイトに、ここまで手伝ってくれたりしないよ」

 黄瀬さんが、優しい口調で、僕の言葉を否定する。

「そうかな?」

 そんなことは、言われたことがないし。

「そうだよ」

 黄瀬さんは言って、立ちあがる。

「そろそろわたし、帰るね。お母さんが、心配しちゃう」

「うん、また明日(あした)、学校で」

「朝の学校でだね。今日は本当にありがとう。バイバイ」

 黄瀬さんは手をふって、公園を出ていく。

 その後ろ姿を見送ってから、僕はベンチにすわったまま、思考をめぐらす。

 指輪捜しをしている間は、考えないようにしていたことだ。

 黄瀬さんと僕で1時間も捜しても、指輪は結局、見つからなかった。

 それが、どういう意味を持つのか。

 可能性は、いくつかある。

 黄瀬さんもうすうす考えているかもしれないけれど……指輪が、地面に落ちたはずみで、(はい)(すい)(こう)などに落ちてしまった可能性。

 この場合、見つけ出すのは難しい。

 または、指輪をなくした場所が、ここではなくて別の場所だった場合。

 つまり見当ちがいの場所を捜していたから、見つからなかっただけだとか。

 この間、僕がカバンからはみ出たチェーンに目をとめたように、うっかりすることもあるようだから、可能性としてはなくもない。

 でもこれも、黄瀬さんの性格や、これまでにきいた話から推測すると、そんなに出し入れしていたわけでもないし、カバンに入れていたなら、そうそう失くすものじゃない。

 あとは、だれかが意図的に(ぬす)んだ可能性。

 これは限りなく少ない。

 アクセサリーは校則で禁止されているし、クラス委員の黄瀬さんなら、友達にも、指輪を持ってきていることは話さないはず。

 それに、夕方(おそ)い時間の学校で、黄瀬さんは最後に指輪を(かく)(にん)している。

 それからは(ほか)の生徒と会っていないはずだから、盗まれる可能性のある時間がない。

 となると……。

 ──もう1つ可能性がある。

 一番(いや)な可能性だ。

 この可能性には、黄瀬さんはまったく思い当たっている様子がない。だから、僕もあえて質問はしなかった。

 公園前の道でぶつかった男が、なにかをひろう動きをしなかったかどうか。

 もし、この質問をしてしまったら、黄瀬さんは、その男を捜そうとするかもしれない。

 僕が考える通りなら……それは一番まずい展開だ。

「……そうなる前に、どうにかしたほうがいいよな」

 僕は、だれもいなくなった公園で、1人ぽつりとつぶやいた。

◇◆◇

作家プロフィール

関連記事

関連書籍

怪盗レッド THE FIRST ここから、すべては始まった

怪盗レッド THE FIRST ここから、すべては始まった

  • 【定価】 1,320円(本体1,200円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】B6判
  • 【ISBN】9784041087664

紙の本を買う

  • カドカワストア
  • アマゾン
  • 楽天

電子書籍を買う

  • BOOK WALKER
怪盗レッド(1) 2代目怪盗、デビューする☆の巻

怪盗レッド(1) 2代目怪盗、デビューする☆の巻

  • 【定価】 704円(本体640円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046310705

紙の本を買う

  • カドカワストア
  • アマゾン
  • 楽天

電子書籍を買う

  • BOOK WALKER