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【最新作をさき読み!】『怪盗レッド THE FIRST』第4話「放っておけない同級生」

3月5日(木)発売予定の『怪盗レッド THE FIRST』を発売前に公開!
これまでのお話はコチラから。
▶プロローグ&第1話
▶第2話 教室で僕は擬態する
▶第3話 はた迷惑な来訪者

 

4 (ほう)っておけない同級生

 今日は午前授業だったから、一度家に帰ってから、僕は出かけることにした。

 家にいても、今日はなにかする気にならなかったし、街をぶらぶらするのは(きら)いじゃない。

 最初は図書館にむかったけれど、運悪く休館日だった。

 しかたなく、駅近くの書店にむかう。

 駅前は、さすがに人通りが多くて、ざわめいている。

 いつもより、ちょっと()き足立っている感じがするけど、気のせいだろうか。

 そんなことを考えつつ、書店の中に入る。

 書店に入ってしまえば、話し声もまばらで、静かだ。

 僕はコンピュータ・プログラミングの本の(たな)に行き、何冊か手に取って、パラパラと中身を見る。

 このあたりの書店においてあるのは、入門書的な本ばかりなので、書いてある内容は、すでに僕の頭の中にも入っている。

 それでも、こうやって本をながめているだけで楽しいから不思議だ。

 もっと高度な本となると、電車で20分ほど行った大きな街に行くか、ネット書店で取り寄せるかになる。

 ネット書店で取り寄せると、中身を(かく)(にん)できないから、本当にほしい内容のときしか使わない。

 また、来月のお()(づか)いが入ったら、大きな書店に行ってみよう。

 興味深い本が入っているかもしれないし。

 そんなふうに、ぶらぶらしてから外に出る。

 1時間ぐらい、書店にいたらしい。

 それでなにも買わなかったから、申し訳ない気持ちになる。

 でも、今月のお小遣いは、すでにほとんど使い果たしていて、()()(づか)いはできないから、しょうがない。

「……近くで(ごう)(とう)事件があるなんて、本当に(こわ)いわね!」

「そうそう! 駅の反対側の貴金属店でしょ。早く犯人をつかまえてほしいわ」

 少し歩いたところで、道の(はし)でおばさん2人が、大きな声で話しているのが、きこえてくる。

 …………強盗事件?

 駅の反対側の貴金属店というと、あそこかな。

 僕とは(えん)がない場所だから、あまりはっきり覚えているわけではないけど、そういう店があったのは、()(おく)にある。

 あの店が、強盗に(おそ)われた?

 そこまで考えて、ふと数日前の新聞の地方版で、となりの市で貴金属店を(ねら)った強盗事件が立て続けに起きている、という記事を読んだことを思い出す。

 あの強盗グループが、この街にやってきたのだろうか。

 気になる話だけど、僕には関係ないか。

 いずれ(たい)()されるだろうし。

 駅前の大型モニターでは、ニュース番組が流れていた。

 キャスターが解説者と会話している。

『あと2週間で、(かん)(きょう)国際会議が始まりますね。この会議は、世界130ヵ国の代表が集まる、大規模な国際会議となっています。この会議に合わせて、初めて使われることになる、〇×県に新設された国際会議場にも注目が集まっており……』

 そういえば、県内で国際会議があるんだっけ。

 場所も、割とここから近いんだけど、同じ市内っていうわけではないから、街をゆく人も()()(ごと)っていう雰囲気(ふんいき)だけど。

 ただ、会議の警備のために、人員が()かれているせいで、強盗事件の(そう)()(おく)れているっていうことはあるのかも。

 駅前を通りすぎ、住宅街をぶらぶらと歩く。

 さわがしかった駅前とちがい、このあたりは昼間でも人がまばらに歩いている程度で、ずいぶんと静かだ。

 (うで)()(けい)を見ると、午後3時。

 少し早いけど、家に帰ろうか。

 そんなことを考えていると、小さな公園が見えてくる。

 砂場と鉄棒があるぐらいで、遊具もあまりない殺風景な公園だけど、(よう)()(えん)ぐらいの子どもが、ボールを()って遊んでいる。

 ベンチでは、母親らしき女の人たちが、おしゃべりをしていた。

 ……ん?

 僕は公園(わき)の道路に、目を止める。

 下をむいたまま、ゆっくりと歩く(ひと)(かげ)がある。

 というか、あれは黄瀬(きなせ)さんだ。

 黄瀬さんは、地面を食い入るように()(わた)しながら、前も見ずに歩いている。

 挙動()(しん)というか、めちゃくちゃあやしいんだけど。

 ベンチにすわる女の人たちも、たまにチラチラと黄瀬さんに視線をむけているし。

「黄瀬さん?」

 僕は近づいていって、おそるおそる声をかける。

「あ……(ふじ)(しろ)くん……」

 黄瀬さんが、顔をあげると、泣きそうな声で僕の名をよぶ。

「どうかしたの?」

 僕は、黄瀬さんを落ちつかせるように、(やさ)しい口調を心がけて、たずねる。

「…………」

 黄瀬さんは、迷ったような表情で、なにも言わない。

 う〜ん……黄瀬さんが(いや)がっているなら、首を()っ込むべきじゃないけど。

 たぶん、これはそういう迷いじゃない……と思う。

 そう判断して、僕から話を切り出す。

「落とし物でもした? たとえば、この間の朝に見た、チェーンのついたアクセサリーとか」

「えっ、どうしてわかったの!?」

 黄瀬さんは、目を見開いて、おどろいた顔をしてる。

 そんなに、おどろかれるようなことじゃないんだけど。

 黄瀬さんが、校則()(はん)までして持ってきていたアクセサリーが、ただおしゃれのためだったとは思えない。

 なにか、お守りのような、個人的に大切なものである可能性が高い。

 そして、今の黄瀬さんの挙動不審な様子が、地面に落ちた物を(さが)しているのだと、すぐにわかった。

 とはいえ、これだって〝可能性が高い〟というだけで、べつに確信があったわけじゃない。

「なんとなく、そう思っただけだよ」

 僕は、言葉をにごす。

 こんなことまで考えていたと知られたら、気味悪がられるかもしれない。

 ちょっとした情報を僕に(あた)えたら、秘密が(あば)かれる、と思われてしまうかもしれない。

 小学生のとき、似たようなことで失敗して以来、なるべく、推測を口に出さないようにしている。

 でも、今は(きん)(きゅう)事態だと思って、つい口に出してしまった。

 実際には、僕は(ちょう)(のう)(りょく)者じゃないし、ただ、予測をたてることしかできないんだけど……。

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