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NEW ものがたり

【期間限定】『恐怖コレクター』1巻無料スペシャル連載 第3回

 夕暮れ時。
 小学校の近くにある小さな公園に、ひとりの少年がやってきた。
 赤いフードを被(かぶ)った少年である。
 公園には少年以外、人の姿はない。
(ブランコの後ろの草むら……)
 少年は女の子たちから聞いた通りの場所へと歩いていった。
 ブランコの後ろには草むらがあり、そこを少し入ると、塀がある。
 ここに昨日、異様なネコがいたのだ。
 しかし、少年が見てみると、異様なネコの姿はそこにはなかった。
(やっぱりもう違う場所に移動したんだ)
 少年はそう思いながら辺りを見渡(わた)した。


 キャッキャッキャッ。

 突然(とつぜん)、人を馬鹿にしたような高い笑い声が公園のほうから響(ひび)く。
「いる! どこだだ」
 少年は草むらから出て公園の中を探した。
 すると、すべり台の上に、段ボール箱のような物体が見えた。
 茶色で毛がフサフサしている。
「異様なネコだ!」
 少年は異様なネコのそばへと駆(か)け寄った。


 ピクンッ!

 少年の存在に気付いたのか、すべり台の上で丸くなっていた異様なネコが耳を立てた。
 キャッキャッキャッと鳴くと、逃げ出そうと身体を動かす。
「待て、動くな!」
 少年は異様なネコに向かって叫(さけ)んだ。
 その声に驚いたのか、異様なネコは身体をビクッとさせると、動くのをやめた。


 ニイィィィ~。

 ネコらしい低いうなり声を発しながら、頭をあげ、少年のほうへ顔を向けた。
 するとその目は、キラキラと輝(かがや)いていた。
 少年はその目を見つめながら、異様なネコに話しかけた。
「お前は一生に1度だけ、どんな質問にも正確に答えることができる。そしてその質問をできるのは、その目を見た者だけ」
 少年は異様なネコに近づく。
 異様なネコはそんな少年を受け入れたのか、逃げずにじっとすべり台の上に座ったまま、キラキラと光る目を彼(かれ)のほうへ向けていた。
 少年はすべり台の横に立つと、大きく息を吸い、異様なネコを見た。


「異様なネコよ。『顔のない子供』はどこにいる?」

 少年は異様なネコに向かってそう叫んだ。
 すると、異様なネコが口を大きく開けた。
 ニイィィィィィ~!!!
 異様なネコは低いうなり声をあげながら、身体を小刻みに動かす。


 ニイィィィ~! ソレ……ハ……。ニイィィィ~! ソレ……ハ……。

 うなり声の中に、人間の言葉が混じり始める。
 少年は異様なネコをじっと見つめ続けた。


 カオノナイコドモ……、ソレハ……。ソレハ……。

 しかし次の瞬間、異様なネコが目を大きく見開いた。

 ニイィィィィィィィィ~~!!!

 叫び声とともに、異様なネコの身体が上へと伸びていく。
 身体はどんどん伸びていき、異様なネコがだんだん細く長くなっていく。
 ついには、異様なネコはフランスパンよりも細く、紐(ひも)のように伸びてしまった。


 ニイィィィィ~! ニイィィィィィィィィィィ~!

 紐になった異様なネコが、今まででいちばん大きな声をあげた。
 すると、その身体がシャボン玉のように、パチンと弾(はじ)けてしまった。
「ああ!」
 それを見て、少年は思わず言葉をもらす。
 異様なネコの姿が完全に消えてしまったのだ。
「やっぱり、顔のない子供のことを聞くのはムリか……」
 少年はガッカリしながら、ふと、ポケットから真っ赤な手帳を取り出した。
「しかし、何の害もないものを作りだすこともあるんだな……」
 少年は手帳を開いて、異様なネコがいたすべり台にそのページを当てる。
 すべり台の鉄柱には奇妙(きみょう)なマークが刻まれていた。
 少年はそれを見ながら、呪文(じゅもん)を唱えた。



 すると、奇妙なマークがキラキラと輝きはじめ、開かれたページに反転して写し取られた。
 鉄柱にあったマークは消えている。
 少年はそれを確認すると、真っ赤な手帳を閉じ、ポケットにしまった。
「もう、この町には用はない……」
 少年はそう言うと、ひとり公園から去っていくのだった。

 その後、この町で異様なネコを見た者はいない。



第4回へ続く


最新27巻は12月10日発売!


作: 佐東 みどり 作: 鶴田 法男 絵: よん

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323798

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作: 佐東 みどり 監修: 鶴田 法男 絵: よん

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046315267

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